LPWAのメリット・デメリット Sigfox・LoRaWAN・ELTRESなど


弊社ではLPWAデバイスのファームウェア(ソフト)開発を行っております。小規模システムの場合はサーバーを含めた開発も承っております。

携帯電話の電波を利用するLTE-Mなどを除く、Sigfox、LoRaWAN、Private LoRa、ELTRESなどの特徴(メリット・デメリット)等を簡単にですがまとめてみます。

LPWA特徴一覧

Sigfoxの特徴

サービス提供事業者: 京セラコミュニケーションシステム株式会社

広いサービスエリア

日本国内の人口カバー率は95%(2021年11月時点)となっており、他のサービスを圧倒しています。都市部では基地局が密に設置されているため、窓のない鉄筋コンクリートの建物内でも通信できる場合もあります。(弊社クライアント様での実績あり)ただし、地下鉄など地下に入るとほぼ通信できないようです。また、日本国内だけではなく世界75カ国で同じデバイスを利用することが可能ですが、海外のSigfox通信に対応したデバイスが必要です。
弊社所在地のようにSigfoxサービスエリア外にてSigfoxを利用する場合には、「Access Station Micro」という屋内用小型基地局をレンタルし設置することでエリアを補完することができます。こちらの基地局は電源につなげば携帯の電波を利用してSigfoxサーバーにデータ送受信することが可能になります。
小型基地局 Access Station MicroとSigfoxデバイスが接近しすぎるとDownlinkが失敗する(過入力状態)ことがありますので、ある程度離して利用するほうがよいようです。(弊社の場合は20mほど離して利用しています。20m以下では利用できないというわけではなく電源の関係です。)

最大データ送受信回数/日:Uplink 140回、Downlink 4回

Uplinkによるデータ送信は1回あたり12バイト、1日あたり140回の制限、Downlinkによるデータ受信は1回あたり8バイト、1日あたり4回の制限があります。

大まかな位置情報取得可能

Atlas Nativeオプションを購入すると、大まかな位置情報を取得することが可能です。GPSを搭載していないデバイス、あるいは屋内でGPSが受信できない環境下であっても大まかな位置情報を取得することが可能です。都市部では基地局が密に設置されているため、良い精度で取得可能な場合もあるようです。

https://www.kccs.co.jp/sigfox/service/atlas/

運用保守あり

日本国内のSigfoxサービスはKCCS(京セラコミュニケーションシステム株式会社)様が担っておられます。そのため、ユーザーはSigfoxインフラ、サーバー等の運用保守を行う必要はなく、安定した通信が可能です。

対応デバイスが比較的多い

他のLPWAと比較すると日本国内で利用可能な市販デバイスが比較的多い印象です。

https://www.kccs.co.jp/sigfox/solution/product/

Sens’it V3 というデバイスには、温湿度、照度、ドア開閉検知、振動検知、磁気、ボタンの6種類の機能が内蔵されており、1年間のSigfox通信ライセンスとクラウドでデータを見える化するためのシステム利用料も含まれており、簡単にSigfoxの検証・利用を行うことができます。

https://www.switch-science.com/catalog/3974/

高速移動通信には適さない

データを送信する基地局が切り替わらなければ通信できる可能性はあるかもしれませんが、基本的に移動しながらの通信は困難です。

参考記事

LoRaWANの特徴

サービス提供事業者(有料):センスウェイ株式会社、株式会社ソラコムなど
サービス提供事業者(無料): The Things Networkなど

サービスエリアは限定的

LoRaWANのサービスエリアは携帯電話やSigfoxの用に広範囲なものではなく、必要な場所にゲートウェイという基地局を設置し、その限られたエリアで利用するイメージです。
センスウェイ様などは都市部ではエリア展開されているようですが、まだまだ全国的に利用できるという状況ではないように思われます。ある工場内、ある施設内、ある自治体内など限られたエリアでの運用に適しています。

通信ランニングコスト0円運用も可能

LoRaWANは基地局(ゲートウェイ)とデバイスを用意すれば誰でも運用することができます。免許などは必要ありません。そのため、必要な機材を揃えれば通信ランニングコスト0円で運用することも可能です。ただし、ゲートウェイやサーバーの保守作業などは必要になります。

TTN(The Things Network)という世界規模のコミニティがあり、こちらのサービスを利用すればサーバー等はTTNのサーバーを無料で利用することができ、デバイスからのデータをTTN経由で自社サーバーなどに送信することが可能になります。弊社でもTTN Yazuを運用しています。

TTNはオープンなコミュニティですので、誰でも利用できる事が利点なのですが、場合によってはClosed環境で運用したいこともあると思います。その場合には、AWS IoT Core for LoRaWAN(有料)などで独自ネットワークを構築することも可能です。

データ送受信サイズは利用サービスに依存

LoRaWANの場合には利用するサービスにより送受信可能なデータサイズが異なります。通常、LoRaWANの送受信可能データサイズは最大11バイトが多いですが、例えば、センスウェイ様の場合には送信は最大242バイトまで可能です。センスウェイ様のサービスを利用した経験はないのですが、おそらく1回のデータ送信サイズを大きくすると通信可能距離は短く、消費電力も大きくなると思われます。

対応デバイスは少なめ

日本国内で利用可能なLoRaWANデバイスは少なめな印象です。世界的には多くのデバイスが販売されているのですが、国内で利用するためには「技適」を取得している必要があり、少なめな印象です。また、特定のサービス用にカスタマイズされているLoRaWANデバイスではそのサービス以外では利用できない(携帯のSIMロックのようなもの)もあり、使い勝手が悪いものもあります。また、販売されているデバイスでも、Private LoRa用のソフトが書き込まれており、LoRaWANで使用するためにはソフトを書き直す必要があるデバイスなどもありますので、デバイス購入時は注意が必要です。

電波干渉に強い

工場内など様々なノイズがある環境においても、比較的ノイズに強いLoRaであれば通信できる可能性があります。利用している周波数帯域やLoRaの変調方式がノイズに強い要因と思います。

高速移動には適さない

そもそもエリアが狭いため移動通信の対象外とは思いますが、LoRaの性質上、高速移動通信には適しません。

参考

降雪時のLoRaWAN通信

先日、弊社所在地では70cm程度の積雪がありましたが、その際にLoRaWANでの通信を確認したところ、GW(基地局)とデバイス間 3650mでのデータ送受信を確認しました。GW設置場所は標高60m程度、デバイスは標高40m程度で、その間に標高100m程度の丘があります。ただし、丘は迂回できる平坦なルートもあります。田舎なので建物はなく障害物は丘程度です。
状況は異なりますが、携帯3Gの通信では積雪により通信が不安定になりました。特に郊外地域においては状況によっては、携帯の電波よりもLoRaの方が有利な状況もありそうです。

GW-DEV間直進経路 地形断面図

Private LoRaの特徴

簡単に運用を始められる

ゲートウェイ1台と複数デバイスというような、小規模なネットワーク構築には手軽に始められるPrivate LoRaが適しています。データ送受信サイズなども自由に決められます。

通信ランニングコスト0円

電波干渉に強い

高速移動通信には適さない

参考

ELTRESの特徴

サービス提供事業者:ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社

ELTRESについては、弊社所在地がサービスエリア外ということもあり実際に検証はできておりません。

高速移動通信が可能

新幹線車中でも通信が可能とのことです。そのため、自動車の位置情報取得・ロギングなどへの活用ができそうです。

屋外利用が前提

ELTRESはGPSを受信しデータ送受信の同期を行っているようです。そのため、屋外での利用が前提であり、屋内でも窓際などGPSが受信できる必要があります。

下り通信(Downlink)不可

対応デバイスが少ない

まだまだこれからという印象です。

IEEE 802.11ah(Wi-Fi HaLow)の特徴

Wi-Fiの新しい規格です。半径最大1km程度まで通信可能です。

弊社での実証実験でも、屋外の見通しがよい状態で800m程度まで通信可能であることを確認しました。

実証実験・PoCなどに利用可能なデバイス紹介

M5Stack Basic

https://www.switch-science.com/catalog/3647/

M5Stack用Sigfoxモジュール

https://www.switch-science.com/catalog/6624/

M5Stack用LoRa無線モジュール (ES920LR3)

https://www.switch-science.com/catalog/7685/

Arduino MKR WAN 1310(LoRa)

https://www.switch-science.com/catalog/7385/

GSM用ダイポールアンテナ(Arduino MKR WAN 1310用)

https://www.switch-science.com/catalog/7386/

SPRESENSEメインボード

https://www.switch-science.com/catalog/3900/

ELTRES Add-onボード

https://www.chip1stop.com/view/dispDetail/DispDetail?partId=CREA-0000001

LoRaWAN ゲートウェイ Dragino LIG16-JP