まず最初に本ブログのタイトルを訂正させていただきます。
ランニングコスト0円と掲載していますが、実際には携帯回線(LTE)の通信費用10年分を前払いすることになります。
しかし、その通信費用はわずか2,000円です!
これは1ヶ月の通信料ではなく、10年分の通信料です。
最長10年間、500MBまで利用することが可能です。センサのデータサイズは小さいため、500MBでも十分対応可能です。
弊社では、Private LoRa、LoRaWAN、Sigfox、LTE-MなどのLPWA通信を利用したデバイスを開発してきました。特殊な用途のデバイスの場合には回路設計などが必要になりますが、PoCなどの場合には市販のデバイスを活用することで低予算でIoTデバイスの開発やクラウドを使った可視化も対応できます。
要約
特徴
- 電源確保が困難な屋外での使用に適している
- 低消費電力設計で長期運用が可能
- 通信コストを削減できる
- 小規模システムやPoCに適した低コストソリューション
- 無料で利用できるクラウドサービスを活用
このシステムは、スマート林業やスマート農業などの分野で、低コストで効率的なデータ収集と可視化を実現することができます。
システム概要
- 屋外でのセンサーデータ収集と、クラウドでの準リアルタイム可視化を実現
- Private LoRaとLTEを組み合わせた通信システム
- 10年間の携帯回線通信費用が2,000円で済む(500MBまで利用可能)
システム構成
IoTデバイス(子機)
- SONY SPRESENSEマイコンを使用
- Private LoRa通信モジュールでデータ送信
- 乾電池駆動で15分ごとにデータ送信
基地局ゲートウェイ(親機)
- SONY SPRESENSEマイコンを使用
- Private LoRa受信とLTE送信機能
- 1時間ごとにLTEでデータアップロード
- 1NCE SIMを使用(10年間500MBまで利用可能)
- ソーラーパネル駆動
クラウドサービス
- 1NCE OS:データ中継サービス
- DATACAKE、TagoIO:データ可視化ツール
- Notion:データベースとして利用可能
目次
想定する活用方法
スマート林業、スマート農業など、電源確保が困難な屋外でセンサ等によりデータを収集し、Private LoRaなどの無線および携帯回線(LTE)でデータ送信し、準リアルタイムでクラウドにて可視化することを想定しています。
準リアルタイムとしているのは、センサからデータを読み取るIoTデバイスや携帯回線でデータを中継する基地局(ゲートウェイ)の消費電力を削減するために通信回数を制限しているためです。
今回はセンサがついている子機デバイスから15分ごとにPrivate LoRaでデータ送信、ゲートウェイ(親機)は常時子機デバイスからのデータを受信し、1時間ごとにサーバーへデータ送信します。
(下図は今回制作したデバイスではなく、想定するシステム活用イメージ画像です)
システム構成
IoTデバイス(センサーデータ Private LoRa送信端末・乾電池駆動)
ハードウェア
マイコン | SONY SPRESENSE |
Private LoRa通信モジュール | クレアリンクテクノロジー E220-900T22S(JP) |
センサ | M5Stack用温湿度気圧センサユニット Ver.3(ENV Ⅲ) |
バッテリー | 単一乾電池 2個(パナソニック エボルタNEO) |
ソフトウェア
15分ごとに温度・湿度をPrivate LoRa通信にて親機(ゲートウェイ)にデータ送信。その後、DeepSleep。
なお、子機・親機間の通信ランニングコストは無料。
基地局ゲートウェイ(Private LoRa受信&LTE送信・ソーラーパネル駆動)
ハードウェア
マイコン | SONY SPRESENSE |
Private LoRa通信モジュール | クレアリンクテクノロジー E220-900T22S(JP) |
LTE通信モジュール | SONY SPRESENSE LTEボード 外付けアンテナモデル CXD5602PWBLM2JEA |
バッテリー | リチウムイオン電池900mAh |
ソーラーパネル | カシムラ スマートカメラ用ソーラーパネル 3W KJ-190 |
ソフトウェア
SPRESENSEはマルチコアプログラミングが可能です。今回は2つのコアを利用します。
MainCore:1時間ごとにLTE通信にて過去1時間分のセンサデータをアップロード。その後、Sleep。
SubCore 1:常時Private LoRaデータ受信。
マルチコア動作しているため、LTE送信中も子機デバイスからのPrivate LoRaデータを受信可能です。
山間部等のLTE電波状態がよくない場所の場合、LTEの回線接続およびデータ送信に時間がかかるため、それらを考慮したソフトウェがが必要です。
また、今回のシステムではゲートウェイ1つにつき1枚のSIMを利用します。子機デバイスにSIMを利用するとランニングコストが嵩みますが、子機と親機(ゲートウェイ)間はPrivate LoRaのため通信ランニングコストは無料です。ただし、クラウド側にてどの子機からのデータであるか区別してデータ管理するための仕組みを作り込む必要があります。(同一SIMからデータ送信されるため、SIMの識別IDでは判断できないため)
携帯SIM
SIMには1NCE SIMを利用します。
1NCEは、最長10年間、500MBまでデータ通信可能なSIMです。
日本国内ではソフトバンクが販売代理店となっており、auまたはソフトバンクのサービスエリア内で利用可能です。
SIM購入時に携帯キャリア(au or ソフトバンク)を選択する方式ではなく、SIMを利用する場所で受信可能なキャリアの携帯回線を利用します。山間部など電波が入りずらい場所だと助かります。
利用料金は2,000円です。
クラウド
クラウドサービスについては、子機5台までは無料で使えるサービスを利用しています。
小規模システムやPoC等であれば十分対応可能です。
1NCE OS
1NECE OSは携帯回線から受信したデータを外部へ中継するサービスです。「OS」となっていますが、いわゆるシステムを動作させるためのOSではなくクラウド上のサービスです。
1NCE OSの利用料は1NCEの利用料金内に含まれているため、追加料金は発生しません。
データサーバー・可視化ツール
DATACAKE
1NCEと簡単に連携できる可視化ツールです。
無料接続台数:5台
データ保存期間:7日
TagoIO
デバイスのデータをグラフ等で見える化するためのサービスです。
1NCEとは直接接続できないため、データ変換したうえで、TagoIOにデータを送信します。
無料接続台数:5台
データ保存期間:30日
Notion
NotionはIoTデータの可視化ツールではなく情報共有ツールですが、データベースとして利用することもでき、1NCEからデータを保存することができます。1NCEと直接接続はできないため、TagoIOの場合と同様にデータ変換したうえで、Notionにデータを登録します。
ただし、グラフ描画機能等はTagoIOやDATACAKEと比較すると劣ります。
無料接続台数:無制限
データ保存期間:無制限