前原小学校 プログラミング公開授業


2018年11月30日、東京都小金井市立前原小学校にてプログラミング授業の公開があり、小学2年生が自らがプログラミングした電動自動車に乗り込み、コースを走るという光景を目の当たりにすることになりました。

自らプログラミングした電動自動車に搭乗


1年生から5年生までのプログラミング授業を1日で見学できる絶好の機会ということで、見学に伺いました。

2020年には小学校でのプログラミング教育が必修化されるわけですが、前原小学校では、松田校長先生をはじめ諸先生方が積極的にプログラミング授業に取り込まれております。

今回の公開授業では、全ての学年が同じシングルボードコンピュータ IchigoJamを使ったプログラミングを行っていました。
IchigoJamというコンピューターは、価格が1台 1,500円程度であり、キーボード等必要な周辺機器を揃えても1万円程度でプログラミングを始めることができます。

IchigoJam育ての親である松田優一さんのお言葉をかりますと、「楽器で例えると普通のパソコンはグランドピアノ、IchigoJamはリコーダー」。
確かに、子どもたちがプログラミングに最初に触れる機会としては、ピアノではないリコーダー、すなわちパソコンではなくIchigoJamのようなシングルボードコンピューターでも十分かもしれません。

周辺機器は学校の機材として共通で使い、子どもたちは自分のコンピューターを1,500円程度で購入し、興味がある子どもは自宅でも使うということも可能です。

IchigoJamは、基本的にはBASIC言語でプログラミングできます。これは、昔からあるパソコンの基礎的なプログラミング言語であり、私も子どものころはBASICでゲームを作って遊びました。現在では、Scratchに代表されるビジュアルプログラミング言語というブロックを積み重ねてプログラミングする方式が流行っていますが、前原小学校では高学年ではテキストベース(昔からある方式)のプログラマーが使うような方式でプログラミングをしていきます。

1年生 LED点滅(イルミネーションを作ろう)


1年生からテキストベースは難しいため、IchigoJamをビジュアルでプログラミングできる「Cutlery Apps」というアプリをタブレットを使ってプログラミングし、その結果をIchigoJamで動作させて確認するという流れになっています。
1年生でもやっていることは、なかなかすごいです。昔なら、中学校の技術家庭の授業でやっていてもおかしくない、LEDを点滅させるプログラミングをしていました。
今回はIchigoJamを使い始めて2回目とのことでしたが、みんな楽しそうにすらすらプログラミングをしていきます。
プログラミングを知っている児童さんなのか、自ら繰り返し処理を組み込んで、何度もLEDが点滅するよう工夫している児童さんもいました。

2年生 電動自動車プログラミング(Radishに乗ろう)

2年生の授業は衝撃的でした。なんで、体育館なんだろう?と不思議に思っていましたが、まさか電動自動車をプログラミングし、さらに、自ら乗り込むとは。
自分が乗るんですから、確実にプログラミングしますよね。
子どもたちは、こんな自動車があるとは知らされていなかったらしく、先生が体育館の奥から自動車を運んでこられたときは、テンションMAX!!
こういうの、いいですね。
これの何がすごいかといいますと、小さなロボットを制御するように作ったプログラムがそのまま電動自動車を制御できるのです。つまり、IchigoJamのボードを小さいロボットに挿すか、電動自動車に挿すかの違いのみです。
子どもたちは、ロボットのプログラミングをするのと全く同じ手順で、プログラミングをしていきます。
いろいろとルールもあり、ここを通るとポイント100点、黒いライン上に停止できれば100点など、とても楽しそうでした。

プログラミングすることが目的になっては意味がありません。それを使って、何をするのか、何を表現するのかが重要です。
今回の電動自動車なんて、前面の距離センサーを使えば、普通の自動車のブレーキアシストのように、壁が近づいたら停止するというようなプログラムも作れてしまいます。すごいです。

3年生 障害物を検知して停止するロボット

3年生はタミヤのロボット(カムプログラムロボット)とIchigoJamを使い、センサーで障害物を検知し停止するプログラミングにチャレンジしていました。

この日、初めて授業でキーボードを使ってテキストベースのプログラミングをするとのことだったので、どんな感じになるのかなぁと思って見ていましたが、みんなすぐにコツをつかんでプログラミングをしていました。グループによっては、ひとりがプログラムコードを声に出して読み、もうひとりがキーを入力する、()を入力するときに、ひとりがShiftキーを押し、もうひとりが「9」のキーを押すなど、工夫をしながら入力していました。なかなか、面白かったです。

プログラムコードの入力ミス等で、正常に動作しないグループもありましたが、なぜ動作しないのか一生懸命に調べていました。

ダンボールケースの中に周辺機器が収納されている

タブレットも机の上にはありますが、これは教材を参照したり共有情報を書き込むためのタブレットであり、プログラミングには直接は使用していないようでした。

4年生 ライントレース

4年生もテキストベースでのライントレース(紙に書いた黒い線をたどるようロボットを動かす)にチャレンジしていました。

4年生は1学期はMicro:bitを使ってブロック式のプログラミングに取り組み、2学期からIchigoJamを使ったBASICプログラミングに挑戦しているとのことです。

ライントレースをするためには、センサーで捉えた数値をどこまでを黒と判断し、どこまでを白と判断するのかをプログラミングしていき、うまく動作するようにする必要があります。部屋の明るさ等によりセンサーから読み込まれる値も変化するため、なかなか難しいのではと思います。
コースも自分たちで模造紙と黒テープで自作していました。

プログラミングコードの解説(まとめ)を先生が最後にされていましたが、センサーの「しきい値」という単語の説明等もあり、私自身が「閾値」なんて単語を知ったのは大学生の頃だったなぁと思いながら、聞いていました。

5年生 変数を使ったアニメーション

5年生は変数を使ってマークを移動させることでアニメーションを表示するプログラミングにチャレンジしていました。
ベースになるプログラムが何種類かプリントで準備してあり、それを打ち込んでアレンジしていく内容でした。
変数を使うのが、今回が初めてかどうか聞いてくるのを忘れてしまいましたが、いろいろと面白いアニメーションを作っていました。

アニメーションといっても、小さなモニターでテキストベースで表現するものですので、Scratchのように派手に画像が移動したり回転したりということはできないのですが、工夫して楽しいアニメーションを作れたようです。

ご講演等

公開授業のあとに、IchigoJam開発者 福野泰介様、前原小学校 校長 松田 孝 様、CutleyApps等開発者 松田優一様のご講演がありました。

皆様のご講演がこれからのプログラミング教育あるいは日本社会の未来を見据えた貴重な内容でここには書ききれませんが、弊社も今後、子どもたちがプログラミングを体験するお手伝いをしていくうえで必要になるであろう項目をメモしておきたいと思います。

・キーボードは低学年から使った方が拒否反応が少ない。
・マウス操作は難しい。
・プログラミングが目的でない。何を作りたいか、何を表現したいか。
・ビジュアル言語では実現できないことがテキストプログラミングだと実現できるものがあることを知ってもらう。
・ビジュアル言語は面倒。テキストプログラミングができるようになれば、それでよい。
・プログラミング言語はコンピューターの「命令」ではない。コンピューターとの「コミュニケーション」
・プログラミングは「現代の砂場遊び」体験から、様々な気づきを得る。
・2018年11月6日 小学校プログラミング教育の手引き(第二版)の内容は第一版から大きな転換があり、C事例を前面に出し、文科省自身が学習指導要領解説(総則)においてプログラミングに取り組む際のねらいとして記述した「教科等で学ぶ知識及び技術等を確実に身に着けさせる」を含まないプログラミング教育を推進しよう! とのメッセージである。
・自治体、各学校の取り組みの差により、プログラミング教育の格差が生まれる。

まとめ

弊社も今後、鳥取地域の子どもたちにプログラミング教室等を通じて、プログラミングの楽しさを伝える活動をしたいと企画している最中です。
今回の前原小学校公開授業では、色々な気付きがありました。弊社所在地の鳥取県八頭町でも今後、プログラミング教育が導入されてくると思いますが、直接的に関われないとしても、プログラミングに興味がある子どもたちに場を提供したり、松田優一様が実践されている「組み見せ」(ライブコーディング:子どもたちの目の前で、子どもたちのリクエストを聞きながら簡単なIchigoJamのゲームプログラムを作る)などの活動も参考に、取り組んでいきたいと思いました。

次回は、2019年2月23日に3学期のプログラミング公開授業があるそうです。