目次
はじめに
コーディングに生成AIは欠かせなくなってきました。初めてCursorを使ったときは衝撃的な体験でしたが、その後もいろいろと模索しています。利用料金を考慮することも必要です。常にコーディングしているのであれば月額定額のサブスクリプションタイプのものが得だと思いますが、ときどきコーディングする程度であれば従量課金タイプの方が低価格の場合もあると思います。
最近は、中国のスタートアップが発表したDeepSeekが話題ですが、本家のDeepSeekはサーバーが中国国内にあり、またユーザーデータが学習に利用される懸念もあるため、利用を躊躇してしまいます。(とはいえ、かなり低価格であることは魅力ですが)
そこで今回は、利用料金は高額になりますが、アメリカの企業が提供しているDeepSeekを利用する方法を検討します。
DeepSeek R1と V3 の違いについて
DeepSeek-R1とDeepSeek-V3は、それぞれ異なる用途に最適化された高性能な言語モデルです。
最近特に話題になっているのはR1です。
基本的な特徴
DeepSeek-V3は、約6710億のパラメータを持つ汎用的な言語モデルで、情報検索やコンテンツ作成などの日常的な用途向けに開発されました。DeepSeek-R1は、2025年1月に発表された後継モデルで、複雑な推論や問題解決に特化した設計が特徴です。
技術的な違い
アーキテクチャ
- 両モデルともMixture-of-Experts(MoE)アーキテクチャを採用
- V3はMulti-head Latent Attentionを実装し、メモリ効率と処理速度を改善
- R1は大規模強化学習を導入し、より深い推論能力を獲得
得意分野
DeepSeek-V3
- コーディング支援
- 翻訳
- 一般的な文章作成
DeepSeek-R1
- 複雑な数学的問題
- 高度な推論タスク
- 長文コンテキスト処理
性能と効率性
DeepSeek-R1
- より高い精度と推論能力
- 計算リソースを多く必要とする
- OpenAI-o1-1217と同等またはそれ以上の性能
DeepSeek-V3
- 軽量化された設計
- 効率的な運用が可能
- 特定のタスクに最適化
エディタの選択:VS CodeとCursor
VS Code:定番の統合開発環境
VS Code(Visual Studio Code)は、Microsoftが開発した無料のオープンソースエディタで、多くの開発者に愛用されています。その特徴は以下の通りです。
- 豊富な拡張機能
- 軽量で高速
- 多言語サポート
- インテリジェントなコード補完
Cursor:VS Codeの進化形
CursorはVS Codeからフォークされたプロジェクトで、VS Codeの基本機能を継承しつつ、独自のAI機能を追加しています。
VS Codeとの互換性
- VS Codeの拡張機能がそのまま利用可能
- RooCodeやCodyなどの拡張機能も使用可能
Cursorの特徴
- AIを活用したコーディング支援機能。
- 無料でも利用可能。外部のAIサービスを接続することも可能。
- カスタマイズされたUI。
エディタの選択基準
エディタの選択は個人の好みや開発スタイルによって異なりますが、以下の点を考慮すると良いかとおもいます。
- 機能の必要性: Cursorの独自機能を活用したい場合はCursorを選択
- UIの好み: VS CodeとCursorのUIは異なるため、使いやすさを比較
- 安定性: VS Codeは長期間の開発実績があり、安定性が高い
Cursorの機能を全く利用しない場合は、VS Codeでも十分な開発環境を構築できます。
最終的には、実際に両方のエディタを試用し、自分の開発スタイルに合ったものを選択することをおすすめします。
日常的にコーディングするならCursorかCodyがおすすめ
Cursor(AI統合コードエディタ)とSourcegraph Cody(VS Code拡張機能)の料金体系と対応LLMを中心に比較します。両ツールともAIを活用したコード補完・編集機能を提供しています。月額サブスクリプションのため料金がわかりやすいです。
Cursorの料金とLLM対応
料金体系
プラン | 価格 | 主な特徴 |
---|---|---|
Hobby | 無料 | ・2000回の補完/月 ・50回の低速プレミアムリクエスト |
Pro | $20/月 | ・無制限の補完 ・500回の高速プレミアムリクエスト ・10回/日のo1-mini使用 ・プライバシーモード |
Business | $40/ユーザー/月 | ・Pro機能全て ・組織全体のプライバシーモード強制 ・チーム管理ダッシュボード |
対応LLM
- GPT-4/GPT-4o:高速リクエストで消費
- Claude 3.5 Sonnet:プレミアムモデル
- Claude 3.5 Haiku:1リクエスト=1/3プレミアム使用
- o1-mini:Cursor独自モデル(1日10回まで)
特徴:生成コードの所有権はユーザーに帰属。
Sourcegraph Codyの料金とLLM対応
料金体系
プラン | 価格 | 主な特徴 |
---|---|---|
Free | 無料 | ・200回のチャット/月 ・無制限補完 ・ローカルコードベースの文脈利用 |
Pro | $9/月 | ・無制限チャット ・GPT-4o/Claude 3 Opus利用 ・1GBまでのコード埋め込み |
Enterprise | $19〜/ユーザー/月 | ・組織全体のコード文脈検索 ・独自LLMキー持込可能 ・高度な管理機能 |
対応LLM
- Claude 3.5 Sonnet/Opus
- GPT-4o/GPT-3.5 Turbo
- Gemini Pro/Flash
- Mixtral-8x7B
- Ollama連携:ローカルLLM接続可能
- Azure OpenAI/Bedrock:Enterprise限定
特徴:マルチLLMアーキテクチャを採用し、タスクごとに最適なモデルを選択可能。Enterpriseでは独自LLMキーの持込が可能。
比較表
項目 | Cursor | Cody |
---|---|---|
基本料金 | $20/月~ | $9/月~ |
特徴 | ・無制限の補完 ・500回の高速プレミアムリクエスト ・10回/日のo1-mini使用 ・プライバシーモード | ・無制限チャット ・GPT-4o/Claude 3 Opus利用 ・1GBまでのコード埋め込み |
LLM選択肢 | 主要商用モデル | 商用+オープンソース |
コード文脈 | ローカルファイル | クラウド含む全コードベース |
チーム機能 | $40/ユーザー | $19/ユーザー~ |
Codyはなんといっても、料金が魅力です。
中国サーバーではないDeepSeekを使う
日常的にコーディングしない場合には、従量課金タイプの方がお得な場合があります。
最初にも記載したとおり、DeepSeekの本家はサーバーが中国国内にあるため、情報漏えいの懸念があります。そこで、アメリカの企業「Fireworks AI」が提供しているDeepSeekを使うことにします。
Fireworks AIのAPIはOpenAI APIと互換があるため、多くのツールで利用できます。
ユーザーが送信したデータの取り扱いについては、下記ページに記載されています。
Fireworks AIはDeepSeek R1と V3 の両方を利用可能ですが、本家と比較すると料金は高額です。特にR1の価格差はかなりあります。V3については、高額ではありますが、R1ほどの価格差はありません。
コードの生成については、V3でも十分対応できると思われますので、今回はV3を利用します。
モデル | Fireworks AI ($/1M トークン) | 本家 ($/1M トークン) |
---|---|---|
DeepSeek R1 | $8.00 (入力・出力共通) | $0.55 (入力), $2.19 (出力) |
DeepSeek V3 | $0.90 (入力・出力共通) | $0.27 (入力), $1.10 (出力) |
Fireworks AIは従量課金タイプのサービスです。同様のサービス提供事業社にはTogether AIなどもありますが、Fireworks AIは利用料金を事前チャージしたり利用上限額を設定できたりして安心できるため、今回はFireworks AIを利用します。
Fireworks AIの設定
アカウント作成
下記ページからアカウントを作成します。
アカウントにはGoogleアカウントを利用します。私はコーディング関連にはGithubアカウントを利用することが多いのですが、Fireworks AIでは使えなさそうでした。
アカウントを作成すると1ドル分のクレジットが付与されるので、ひとまず動作を確認できます。
API Key作成
画面右上のユーザーアカウントアイコンをクリックすると「API keys」が表示されるため、それをクリックします。
その後、「Create API key」をクリックし、適当な名前を付けてkeyを作成します。
作成されたkeyは今後は再表示不可能になるため、コピーをして保存してください。
モデル選択
画面上部メニューの「My Models」をクリックし、「Deepseek V3」を選択します。他のモデルを利用する場合には、「More models」をクリックするとモデルの一覧が表示されます。モデルの中から「Serverless」対応のモデルを選択します。
API情報を取得する
VS Codeに設定する情報を取得します。
モデルを選択すると、サンプルコードが表示されます。Deepseek V3の場合は次のような画面となり、そこからモデル名を取得します。
- URL:https://api.fireworks.ai/inference/v1
- API Key:先ほど作成したKey
- モデル名:accounts/fireworks/models/deepseek-v3
VS Code拡張機能(RooCodeなど)にAPI情報を設定する
VS Codeに拡張機能「RooCode」をインストールし、RooCodeの設定をします。
- 画面左側のアイコンからロケットのアイコンをクリックします。
- 画面上のギアアイコンをクリックし設定画面を表示します。
- Configuration Profileが初期状態では「default」になっているため、プラスアイコンをクリックしてprofileを追加します。
- 追加したprofileの名前を、ペンアイコンをクリックして適当な名前に変更します。
- API Provideを「OpenAI Compatible」を選択します。
- Base URL、API Key、モデル名にFireworks AIから取得したAPI情報を設定します。
以上の設定で、RooCodeからFireworks AIのDeepSeekを利用できます。モデル名を変更すればDeepSeek R1も利用できますし、他のモデルも利用できます。
利用するごとにFireworks AIのクレジット(初期登録特典 1ドル)が消費されていきます。0になる前にクレジットを追加してください。追加は5ドル以上のようです。
また、Fireworks AIのAPIを利用することで、OpenAI APIを利用する他の拡張機能でもFireworks AIを利用できます。CursorのAIサービスとしてFireworks AIを利用することも可能です。
【補足】perplexityのAPI
私が日常的に利用しているperplexityでもAPIを利用できますが、先日、利用可能なモデルとして「sonar-reasoning」がリリースされました。sonar-reasoningの内部ではDeepSeekが利用され、検索結果と合わせてperplexity独自のモデルとなっているようです。
検索結果を完全に排除できないため、通常のDeepSeekと同様の使い方はできないかもしれませんが、何かに役立つかもしれません。
perplexityは有料プランを契約すると5ドル分のAPIクレジットが付与されるためお得です。
なお、perplexityにて今までAPIで提供されていたモデル(llama-3.1-sonar-small-128k-online 等)は2025/2/22で廃止されるようなので、利用している場合いはsonarへ変更が必要だと思います。
FAQ
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生成AIはコーディングにどのように役立ちますか?
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生成AIは、コード補完、バグ修正、リファクタリング支援など、様々な面でコーディングを効率化します。自然言語での指示からコードを生成したり、複雑なアルゴリズムの実装を支援したりすることも可能です。
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コーディング用の生成AIツールの料金体系にはどのようなものがありますか?
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主に2種類あります。月額定額のサブスクリプションタイプと、使用量に応じて課金される従量課金タイプです。頻繁にコーディングする場合はサブスクリプションタイプ、ときどきコーディングする場合は従量課金タイプが適しているかもしれません。
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DeepSeek R1とDeepSeek V3の主な違いは何ですか?
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DeepSeek R1は複雑な推論や問題解決に特化し、DeepSeek V3は情報検索やコンテンツ作成などの一般的なタスクに適しています。R1はより高度な推論能力を持ちますが、V3の方が軽量で効率的な運用が可能です。一般的なコーディングはV3でも対応可能です。また、料金もV3の方が低く設定されています。
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DeepSeekを安全に利用する方法はありますか?
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本家DeepSeekのサーバーは中国にあるため、データセキュリティの懸念がある場合は、Fireworks AIなどのアメリカの企業が提供するDeepSeekサービスを利用することで、より安全に使用できます。
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VS CodeとCursorの主な違いは何ですか?
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CursorはVS Codeをベースにしていますが、AIコーディング支援機能が統合されています。VS Codeは安定性と豊富な拡張機能が特徴で、Cursorは独自のAI機能とカスタマイズされたUIが特徴です。
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CursorとSourcegraph Codyはどのように違いますか?
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CursorはスタンドアロンのAI統合コードエディタで、CodyはVS Code用の拡張機能です。料金体系や対応LLMが異なり、Codyの方が低価格です。
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Fireworks AIでDeepSeekを利用するメリットは何ですか?
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Fireworks AIを利用することで、中国のサーバーを介さずにDeepSeekのモデルを使用できます。これにより、データセキュリティの懸念を軽減しつつ、DeepSeekの高性能なAI機能を活用できます。
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Fireworks AIの料金はDeepSeek本家と比べてどうですか?
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Fireworks AIの料金は本家DeepSeekよりも高額です。特にR1モデルの価格差が大きく、V3モデルはそれほど大きな差はありません。ただし、データセキュリティの観点から選択する価値がある場合もあります。
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Fireworks AIをVS Codeで使用する方法は?
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Fireworks AIのAPIはOpenAI APIと互換があるため、様々なツールで活用できます。VS Codeの拡張機能(例:RooCode)をインストールし、Fireworks AIのAPI情報(URL、API Key、モデル名)を設定することで利用可能になります。これにより、VS Code内でFireworks AIのDeepSeekモデルや他のモデルを使用できます。
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データプライバシーを確保するにはどうすればよいですか?
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Fireworks AI:米国サーバーを使用し、データ暗号化を行っています。また、ユーザーのデータがモデルの学習等に利用されることはありません。
https://docs.fireworks.ai/guides/security_compliance/data_handling
Cursor:プライバシーモードを有効にすることで、データの取り扱いを制限できます。